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星の島で恋をした【完結】
第12章 《十二》
 リクハルドは易々とセルマを膝に抱えると、セルマの茶色の髪をすきながらじっと顔を見つめてきた。セルマは恥ずかしくてリクハルドから視線を外した。

「キスをしよう」
「…………っ!」

 どうしてこの男は臆面もなく恥ずかしいことを言ってくるのだ。

 セルマは真っ赤になって首をぶんぶんと振って否定した。

「照れ屋でかわいい」

 リクハルドの言葉にセルマはまた首を振った。

 なんだろう、この男は。

 今まで周りにいなかった性格でどう対処すればいいのか分からない。

 セルマの同意を得られなかったからか、リクハルドはキスをしてこなかった。



 二人の間を風が吹いていく。相変わらずの透明さだったけれど、やはり今日は不安にはならなかった。

 ぼんやりと風に吹かれていると、リクハルドが口を開いた。



「なあ、セルマ。カティヤのところに帰るなって言ったら、ここに残ってくれるか」
「……は?」


 唐突すぎる申し出にセルマは思わずリクハルドの顔を見た。



「俺の一族、こうやって世界のあちこちで星を護ってるんだ」
「星を……?」
「そうだ。そして星の墓場はここだけではなくて、世界のあちこちにある」


 ここにしかないと思っていたので、リクハルドの説明に驚いた。

 セルマは星の墓場と呼ばれるこの島のような場所はここにしかないと思っていたのだ。

 他にも同じような場所があったのに、どうしてカティヤ王女はここをすすめてきたのだろうか。

 その疑問は、リクハルドの次の言葉で分かった。



「だけど、島になっているのはここだけだ。あとは奥深い森の中か山の中だ」


 肩に傷を負ったセルマが一人きりでそんな場所へ向かえるわけがなかった。だからカティヤ王女はここに来るようにと言ったのだろう。



「俺はここにずっと一人でいても一族と繋がっているから淋しくはない。それに、一人でいることの方が好きだからここに来た」
「一人が好き……」
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