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星の島で恋をした【完結】
第14章 《十四》
 リクハルドを盾にして近寄るという方法で大丈夫なのだろうかと思うのだけど、今は彼を信頼するしかなかった。



「セルマ、スキアは『影』だから」
「……影?」
「そう。スキアは影を使って移動するから、影に気をつけて」
「……分かった」


 とは答えたものの、セルマはリクハルドの言っている意味がよく分からなかった。



 スキアは影だと言った。

 セルマは入り江に入り、できるだけ端を通ってスキアに近づく。

 腰辺りだった水が陸地に近づくにつれ、どんどん浅くなっていく。

 崖の影にいるというスキアはどれなのだろうか。崖の側は影になっているから黒い陸地のせいで姿がはっきりと見えない。

 じゃぶじゃぶと音がして、セルマはようやく陸地へと到着した。腰から下は水に濡れていて重たく感じる。これで動けるのだろうかと思ったが、リクハルドがいる手前、脱ぐことができなくてこのままでいることにした。せめてもの救いは下穿きの丈が短くてぴったりとしているので裾がまとわりつかないことだろうか。

 そんなことを思いながらセルマはリクハルドから借りている布を右手首から外した。

 昼間の太陽の下だと夜ほど光っていないけれど、それでも虹色に淡く輝いているのが分かった。

 さて、これをどうやって使えばいいのだろうと思っていると、少し先の崖の影から聞いたことのない咆哮が聞こえてきた。
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