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記憶をなくしたアリスに溺れて
第2章 アリスに教えてください
部屋に入ると、すぐにエアコンのスイッチを入れ、風呂を沸かした。

アリスは、玄関でもじもじしている。

「いいよ。あがって」
と言うと、
「あ…の、どうするか分からなくて…」
と、足をすり合わせている。

?―脱ぎづらい靴なのか?

僕は、アリスの靴のバックルを外し、白いふくらはぎを持ち上げ、片方の靴を脱がせた。

特に難しい靴ではないけど。

反対側も同じように脱がすと、かがんだ僕の頬にアリスのスカートが触れた。

冷たい。

アリスの手をひき、カーペットの上に座らせながら、
「いつから、あそこにいた?」
と聞いた。

するとアリスは驚いたような顔をして、
「分からないの…」
と答えた。

その表情がたまらなく可愛い。
頬も唇も、ミルクプリンのように柔らかそうだ。

僕は、アリスの頬に腕をのばした。

ひやっと冷たい肌は、吸盤のように僕の手のひらを吸い付けた。
押せばどこまでも沈みそうな感触。

ぞわぞわしたものが僕の中で蠢く。

包んで守ってあげたい感情と、めちゃくちゃに奪ってしまいたい衝動。

アリスの身体は、僕の思考を融解させそうな魔力を放っている。

「誰か、待ってんの?」

頬に手を置いたまま問うと、アリスは顔を傾けて、僕の親指をそっと小さな唇に含んだ。

温かく湿った口腔で、柔らかな舌が僕の指をなぞる。

アリスは、僕の瞳から視線を外さないまま、ブラウスのボタンに手をかけた。

「あいすは、ひほってもはうのをはっていはした」

「?」

僕の親指を口に含んだままのアリスの言葉が理解できない。

僕は、「あーん」と自分の口を開いた。

つられてアリスも口をあける。餌を待つ雛の様だ。

親指を抜くと、アリスの口から唾液が溢れた。

こくん、と飲み下してアリスは
「アリスは、誰かに拾ってもらうのを待っていました」
と言った。

言いながら、ブラウスのボタンを外そうとしている。

だけど、指先がかじかんでいるのか、成長しすぎた胸がボタンホールを引っ張りすぎるのか、一向に外れない。
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