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妄想H短編集
第10章 人魚の即席ビキニ
少し早めのお盆休み
ローカル線を乗り継ぎ
エアコンの無いバスに揺られ
バス停から炎天下を30分歩き
彼氏の祖母の家という
人里離れた海辺の一軒家へ到着した
「…おばあちゃん凄い所に住んでるのね」
「だから親戚は誰も来たがらないんだよ」
「どーやって生活してたの?」
「なぁに、じーちゃんが生きてた頃は町まで船で30分かからなかったからね」
「へー」
彼氏に着いて玄関横の岩場の階段を降りていくと
目の前に青い海が拡がっていた
「…室町時代から代々続いた漁師もじーちゃんの代で終わったよ」
「おじいさんはやっぱり海で難破して亡くなったの?」
「いやー町でナンパした人と行きつけのスナックで飲みすぎて倒れてそのまま…」
「…なんぱ違いか…優人のおじいさんらしいわね」
「どこが!…ガチャッ…はいどうぞ」
階段の途中にある勝手口が開くと長年染み込んだ魚の熟成されたような生臭さが漂ってきた。臭いと言うよりは優しい懐かしいような感じがした。
独り暮しのおばあさんが入院して3ヶ月
たまには風を通さないと家が傷むというので
彼氏の優人が来ることになり
私もお供することにしたのだ
「おぉっもうプチ空き家の匂いがするな」
「確かにちょっとカビ臭いわね」
「とりあえず窓という窓を開け放とう」
と勝手知らない家だけれど
手当たり次第戸や窓を開け放した
「おーい来てみろよ~」
2階で優人の呼ぶ声がするので上がってみる

階段を上がると玄関?前はさっき来た道?
この家は斜面に建っているから
どっちも1階になるんだ…
「こっちこっち」
声のする奥の部屋へ向かうと
優人が窓の外を眺めていた
「わっ!」
目の前には真っ青な空が拡がり
中程の水平線より下は
真夏の太陽が水面にキラキラ輝いていた
海はこの家から小さな湾になっていて
周りは岩肌で木が繁っている
見下ろすと3階程の高さがあり
砂浜が30m先の海まで続いていた
「さ、泳ごう!」
優人は立ち上がって水着に着替え始めた
「も、もう?」
「早くしないと置いてくぞ~ってすぐそこだし、プライベートビーチみたいなもんだからゆっくりおいで~人は居ないからなんなら裸でもいいぞ~っと、じゃお先ぃ~」
優人は子どもみたいにはしゃいで飛び出て行った
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