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飼育✻販売のお仕事
第14章 夏季休暇



 育児放棄。


 その言葉にとりわけ覚える感慨はなかった。


 里子と暮らしていた両親が、縁もゆかりもない赤の他人と知ったのは、小学校を出るより前のことだ。

 実の母親は、避妊の不手際で里子を身籠ったという。身体における問題はなく、周囲は無理矢理中絶を断念させたらしい。代わりに不妊治療がいきづまっていた友人に、娘を譲り渡したという。


 育ての親は里子に親切だった。学校を出るまでは家に置いておくことを約束していた。



 大学を出てから一年ほど、友人の家を転々とした。アルバイトもしないで二度目の春には一人暮らしを始められていたのは、彼女らの紹介で世間知らずの令嬢達を抱いていたからだ。可愛い顧客は恥ずかしげもなく脚を開き、金で契約した女の指に法悦していた。…………


 里子の一年遅れの就職先は、令嬢らの内の一人による紹介だった。

 職場で懇ろになった同世代の上司は、いやにぼうぞくな女だった。ぼうぞくなのは見目だけだった。トリマーを育てる専門学校卒業後、女が一年ほど猫カフェで働いていた経歴を持つのを知ったのは、それから随分後のことだ。
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