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はじめの一歩
第1章 Butterfly
売れっ子らしく、いつも指名できるわけではなかったが、そんな時はさりげなく席に着いた子に彼女の話を聞いた。

もちろん他のホステスに入れあげている男に同席するのはいい気はしかなかったろう。

店で働く女の子たちは皆ライバルだ。敵に塩を送るような真似はしない。

女の子の話がどこまで信用に値するかはわからなかった。

偶々近くの席の客に彼女が付いている時などは、会話に聞き耳を立てたりもした。
我ながら変態的だと感じることもあったが、彼女が気になる理由は他にもあった。

どうも、何処かで会ったことがある様な気がしてならなかったのだ。

確証はない。
だが、彼女が時折見せる遠い目。
何かを考え込むような目に見覚えがあった。

どこで見たのか、それが思い出せない。
他人の空似の可能性もあった。

他の女の子はライバルだが、ママは違う。
ママは、どうやら彼女を殊の外可愛がっているようで、そこをつくと、意外な話が聞けた。

「あの子、お母さんとまだ学生の弟さんを養ってるみたいなの。」
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