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他人の妻、親友の夫
第6章 超える一線
「もっとして……」

理依は彼の首に腕を回してきつく抱きついてくる。

「私を……滅茶苦茶にして下さい……」

顔がくっつきそうなほどに近い。
ここまでしておきながらまだキスはしていなかった。
それは、なぜかしてはいけないと心の中で誓っていた。

至近距離で視る理依も美しかった。

玄関と部屋の間には一枚襖がある。
それが静かに開いていく。

半分ほど開いた向こうから妻と秋彦の顔が現れた。

『志歩っ……』

二人は部屋に入ってくるつもりはないようだった。
顔だけを出して遠巻きにこちらを伺っている。
肉食獣に食い殺される仲間を視る草食動物のように、ただ黙ってこちらを視てきた。

志歩は先日のように驚愕と絶望の入り交じった顔はしていない。
潤んだ瞳には明らかに興奮の色が浮かんでいた。

『妻を、理依さんを抱いてやってください』
秋彦の言葉が脳内で甦る。

本当に、そこまで望んでいるのだろうか、この夫は……
理依さんは……
志歩は……

そして、俺は……
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