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他人の妻、親友の夫
第2章 欲望の渇き
しかし彼の返事はなかった。
相手の顔が見えないと、なんだか自分の心に話し掛けている気分になってしまう。
それが言わなくてもいいことまで言ってしまう力に変わった。

「私だってありますよ……変な願望が」

しばらく静寂が訪れ、気まずさが増す。

「それは……どういった?」

遠慮がちに秋彦が訊ねてきた。

「私の場合は……笑わないでくださいよ……少しMっ気があるというか……」

言いながら顔が赤くなる。
しかし先輩の秘密を知った以上、自分もカミングアウトしてやろうという変な気持ちにさせられていた。
或いは秋彦の聞き方が上手だったからかもしれない。

「M願望がある女性は多いみたいですよ……」
「そうなんですか? まあ私の場合はそんなハードじゃないですよ。少し意地悪なこと言われたり、あんまり痛くない程度に乱暴にされてみたい程度で……」

脳裏には先ほどの光景が甦っていた。
きつく胸を掴まれたり、激しく指で掻き回される理依が、正直羨ましいと感じてしまった。

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