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瞳で抱きしめて
第3章 どこまで落ちていくの?
あっという間に年末になった。


毎年家族で過ごしていた年末年始。

この時ばかりは、普段家に不在がちな父も毎年家で過ごしていたはずだったが、どういうわけか地方に出張になった。

なるべく顔を会わせたくなかった俺にとっては好都合だったが、予想外だったことは、寒さで祖母が体調を悪くしてしまい、母が北海道に帰省してしまったことだった。



ちなみに、母には樹理さんと真理さん、雄介さんのことも、普段世話になっていることも話していた。

母としても未成年の息子を一人で家に残しておかざるをえない状況を心配していたようで、近所に住む樹理さんたちを紹介したときには少し安心したような顔をした。




そんなこともあり、12月から1月の間はほとんど樹理さんの家で過ごすことになったのだった。


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そして今、冬休みに入ったばかりの午後、俺は真理さんとダイニングテーブルの上で問題集を広げていた。


樹理さん、真理さん、そしてたまに雄介さんも家庭教師をしてくれる。

雄介さんは微妙だが、樹理さんも真理さんもなかなか難しいと感じる問題をスラスラ解いていくのにはじめは驚いていたけれど、二人とも学生時代に劣等生を経験したことはないのだという。


「うちの親、けっこう勉強には厳しかったからね」


真理さんの通う大学は国立だし、彼女によると樹理さんは自分よりもずっと頭がいいのだという。


「お姉ちゃんは店を潰したくなかったからね。両親が海外に行くことになって、ホントはこの店たたむ予定だったのよ。だけど潰すくらいなら自分が引き継ぐって…間に合うように学校を卒業したいからって、短大を選んだの」


そう語った真理さんは、珍しくどことなく困ったような顔をしていた。


「なのに私は普通に四年生の大学通わせてもらっていて…ちょっとお姉ちゃんには申し訳ないなって思ってるんだよ?」


遠くを見るような目をして、彼女は付け加えた。


「ほんとは美大に行きたかったのに。お店のために経営学勉強できるとこ行ったしね…昔からそうだけど、お姉ちゃんは我慢しすぎるところがあるから…」
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