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瞳で抱きしめて
第5章 新生活
そこまで聞いた光は、突然怒ったような顔をして短く「やめて」と呟いた。




再び捕らわれる私の視線。




なぜこの子の瞳はこんなに私の弱いところを捕まえるのだろう。




「そんなこと言わないで。樹理さんしかいない。俺は、樹理さんしかいないのに。なんで…?…なんで分かってくれない?」




両頬を両手で包み込み、再び光は私に口づける。



怒りに任せるように、深く、深く。



唇を割って入ってきた光の舌はとても熱かった。




「……んっ!」



くぐもった自分の声が聞こえた。



激しい口づけを与えられながら、私はどんどん壁際に追い込まれていく。



トン、と背中に壁が当たった音が僅かに聞こえて、遂に逃げ場がなくなったことを私に伝える。




「はぁ……あっ……ひか、る」



顎の角度を変える度に僅かに離れる唇。


その合間に私は光に問いかけた。




「な、んで…こんなに……んっ…!手慣れてる…の?」




息づかいが荒くなった光は、その問に答えるために一旦私から唇を離した。



「なんで…?俺は樹理さんが初めてだよ」




そしてすぐに唇を押し付けてくる。




「キスも…恋したのも…こんなに我慢できなくなったのも…」



強く抱き締められ、耳元に光の声が聞こえた。




「全部、樹理さんが初めて」



「…ぁ…っ!」




耳朶に口付けられて、そこが敏感な私はビクッと身体を震わせた。

ゾクゾクする官能的で甘い刺激が駆け抜ける。




「樹理さんは?」




刺激の余韻が残る耳に、光の問いかけが届く。




「俺が初めてじゃない…?」
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