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口琴
第4章 性人形
暗闇の渡り廊下の足元を照らす間接照明が、点々と道標のようにいざなう先は、豪邸の片隅にひっそりと佇む数寄屋造りの平屋。

あの日と同じ場所。

海外客の為の、ゲストハウスとして建てられた場所だ。

格子戸を開け、その奥の襖を開けると、行灯の灯る仄暗い和室…。

藺草の香り…。

一組だけ敷かれた高級な和布団…。

鮮明に甦るあの日の恐怖…。

蕾の背筋を汗が一筋流れ落ちる。

いきなり布団の上に転がされた。

覚悟を決めたとはいえ、自然に溢れる涙は当然と言うもの。

カコーーン…………カコーーン…………

ビクンッ!

静寂の中に、突然轟く鹿威しの音に驚いて、小さな躰が跳ねる。

「ハッハッ!まるで小鹿だね?バンビちゃん?ほら、こっちへおいで?」

中條は障子を開け、部屋続きの広縁へ蕾を連れ出した。

海外客をもてなす為に造られた日本庭園が、月明かりと灯籠に映え、見事に広がっていた。

「君を驚かせた正体は、あの鹿威しだ…」

竹筒が岩肌から流れる水を受け、満水になる度にお辞儀をして蹲へと水を落とす。身軽になった竹筒は頭を上げ、置き石に当たっては、静かな庭にその音を反響させる…。
ゆったりと、規則的に繰り返されるリズムは風情あるものではあったが、今の蕾には不気味な狐の遠吠えにしか聴こえない。

中條は、広縁の下にまで広がる池に向けて、大きく柏手を打った。

パンパンパン!

LEDでライトアップされた水中に、色鮮やかな錦鯉が十数匹、広縁の下に集まり、蕾の足元で優雅に舞い踊った。

優舞する美しい鯉さえも、蕾には地獄の亡者達のもがきにしか見えなかった…。

すると……

ガバッ‼

背後から、いきなり強く躰を抱きすくめられた。

「ッ!」

中條は、もがく蕾の背後から荒い鼻息で、耳や首筋に唇を這わせた。

少女の放つ独特の甘い香りと、少し汗ばんだ性的な香りが、この男の欲情を掻き立て、下半身を早くも強張らせた。

「キャーッ!嫌ァ~!」

突然の悲鳴に鯉達が水しぶきを上げ、てんでに散る。

「あぁいい匂いだ…。おじちゃんのこの錦鯉も、早く可愛いバンビちゃんと遊びたがってる。ほうら、こんなにビクンビクンして…活きがイイ…」

着物の裾をはだけ、制服のスカート越しに強張りを擦り付ける。その度にスカートの裾が捲れ、白い木綿のショーツが見え隠れする。

助けて…助けて…
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