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第1章 そのいち

元々見た目と全く違った性格で、
雑誌のモデルをしたからといって調子に乗るほどシンプルではない。


OKしたのは、
自分の糧になると思ったからだ。

役者として、
エキストラからスタートした翔汰。


徐々に端役を貰えるようになったのが昨年23歳の秋だった。
大学は院生になっていたから、
博士号を取得するため猛勉強しながらバイト感覚で役者をしていた。



―――それがなぜセクシー男優になっちゃったかというと。


郷里の母が失踪したのである。
高校生の妹（17）を1人残して。



小学生の頃に両親が離婚。父親が浮気症だったのだ。幸い（？）母の実家は資産家で、
郷里の田舎では経済的余裕があるほうだったから母は翔汰と妹を連れて実家に戻った。


ところが、
半年前のこと。


祖母が泣きながら、
翔汰の1人暮らしのアパートに上京してきた。

『ミサコ（←母）が居なくなった！』と…
ミサコはどうやら男と駆け落ちしたらしく、
妹は半ば狂乱していると言う。

学費は停滞し、
大学はせっかく院まで通ったが自主退学。


『そこそこクリアできてた人生設計が、
母の失踪により180度方向転換した』………のである。

田舎に帰省したところ祖父母はパニックに陥っているし、
狂乱と聞いてた妹はあっけらかんと『出てくと思ってたよ、
あたしは。ママのめり込んでたもん』と平然と受け入れていた。