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第1章 そのいち

柏木るいは現役の大学生だと甲斐から聞いていた。


やんわり『素人さんだから丁重に』とお達しがあったということ。


何かで揉めると、
現代のネット社会では一瞬にして潰されてしまうのだ。


『お互い自分を守ろうね』という予防線を張らなければ、
とくにセクシー俳優は生き残れない。


蟻地獄に常に居る華やかな一流芸能人たちよりは、
ある意味生きやすいかもしれないけれど。。



―――オフィスに足を踏み入れる。


『あれ？
まだ到着してないか…』甲斐が呟く。


撮影班は居るが、
柏木るいは未だ来てないようだ。


撮影は午前11時45分開始予定。

いま、甲斐の左腕の時計は11時20分だった。