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イカせ屋稼業
第10章 〜番外編〜


「緋路〜〜〜。
今度の試合観に行っていー?」


芝生でパンを食べていると、
裕希がそう言い出した。


メロンパンをかじりながら、
俺は「なに?
大きい大会あんの?」と訊きブラックコーヒーを一口飲んだ。



緋路はおにぎりを食べながら、
「うん。夏の総体前の練習試合だけどね。
隣の白丘高【しらおかこう】のトレーニングセンターであるんだ。5校集まって合同試合」
と嬉しそうに笑う。


右側だけ八重歯が覗き、

俺はその尖りをチラリと見た。





「裕希、ベースとボーカル連れてくるのはヤメテくれよ?」

「もうしないよ(笑)
応援にチカラ入ると思ったんだけどなー。」


「バカ、
俺あの後監督と部長にこっぴどく叱られたんだぞ」



以前、応援に行ったときに裕希がバンド仲間を連れてきた。


体育館は音がこもって響く。


2階からボーカルの男子が唄うと、
声援はフロアに届いたのだけど…勿論「試合中に音楽機材を持ち込んで鳴らすなー!唄うなー!」
と物凄く怒られた。



緋路は「カンベンしてよー」と言うものの、
怒らない。


性格が良いのだ。
加えて2年のなかでエース的な存在だから、
バスケ部の面々も皆「しょうがないなぁ(笑)」くらいの対応だった。





3人で話ながら芝生で寝転がっていると、

「ちょっといいかな」

声がして顔を上げた。



――――巻き髪の派手な女子が腕を組んで仁王立ちさている。
「曽我せんぱい?
話あるんですけど」
派手な子の後ろで、
優衣が泣きそうな表情をして縮こまっている。



俺は(ああ、昨日優衣の後ろに居たなぁ)
と気づく。


「………はいはい、
話ね」
俺は立ち上がり、
派手な子が促す通りに芝生から庭園を抜けて外階段を上がり、屋上に向かう。




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