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イカせ屋稼業
第14章 そのじゅうに
___警官は復唱した。
『つまり、あなたは男が女性に暴力を振る場面を目撃し、
止めに入ったところ殴られた…………と』


甲斐が翔汰を見る。

『そうです。』
翔汰は鳩尾を擦りながら答えた。


『男・女性との面識は?』


『ありません。
悲鳴が聞こえたので、このポカリ買ってた自販機から走ってきました』

翔汰はKANAMEのことを伏せておいた。

話したら、
あのギャル風の女子まで聴取されてしまう。



___あの子もきっと脅されて引きずり込まれたクチだ。


『………はいはい、目撃して止めに入った、と。
もー、問題起こさないで下さいよっ』
警官は面倒くさそうに注意して去って行った。





『大丈夫か?
KANAME、力いっぱい蹴ってたなぁ苦笑』
甲斐が翔汰の背中を小突く。


『大丈夫っす。
___しっかしよく遭遇しますね………』
翔汰はふーっと息を吐いた。


『ま、同業だしね。
ヤツらの縄張りが近いんだろーな。
それか、妙な縁があるかだ』



『悪縁っすけどね(笑)

あー、ポカリもったいね~』

駄弁りながら甲斐と歩く。



バンワゴンに乗り込んで、
車内のワゴン部分に掛けてある衣装からYシャツを取り着替える。

髪にスプレーをしてキチンと撫でつける。


S男はセールスのサラリーマンという設定。

ありがちなパターンだけれど、
(ま、ベタなのが見やすいんだろうな)と頭を次の撮影に切り替えた。



まさか自分の知らないところで拓矢が動いてるとは、
微塵も思わない翔汰だった…………………。
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