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イカせ屋稼業
第2章 そのに
翔汰はバスローブを羽織り、
3階フロア入り口にあった古い座椅子に腰を下ろした。

バッグから鏡を取り出して髪の毛や肌をチェックする。


仕事用バッグは常用している。
念のために鎮痛剤・絆創膏(肌色)、下着など〔お泊まりグッズ〕も持参している。


途中で買えばいいのだけれど、
〔最中に万が一のことがあったら〕と考えて「スタッフ&演者の中で1人でも持ってたら良いだろう」
と思っている。



不必要なまま撮影が終了する場合のが多い。。


『―――色々持ち込んで、熱心なんだね』
バッグに鏡を戻していると、
同じくバスローブを羽織った城戸ゆうこが淡々とした口調で話し掛けてきた。


『ああ、いえ。
何かあった時に便利かなと考えてるだけです』


ゆうこは左手にタバコを持ち、
『それでも凄いわ。
…あ、ごめんなさいタバコ大丈夫かしら?』


『大丈夫ですよ』


『男優にも色々いるのね。昔ひどいヤツが居たわ。
ほらここ……』
左肘を翔汰に突き出した。火傷の跡のような丸い傷がある。


『タバコの火をジュッてね(苦笑)』

『それ、ダメですね…』
ありえない。
翔汰は休憩中に話し掛けてきたこと自体にも戸惑いつつ答える。


ゆうこは美しいキリリとした横長い瞳で、
『そういうことがあってからSキャラに変えたのよ。何がなんでも有名になってやるわってね……
あ、いけない…喋り過ぎだね私』
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