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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐
 伊勢次が亡くなった前年には、父伊八が亡くなった。ほんのわずかの間に、一体、自分は何人の大切な人を失わなければならないのだろう。
 お彩は、極楽にいる伊勢次に、懸命に祈った。
―どうか、おっかさんまで連れていかないで。
と。
 しまいには、あまりの水の冷たさ、寒さに身体中の感覚どころか意識さえ遠くなりかけたが、それでも、ただひたすら水垢離を続けた。
 それは一刻余りも続き、漸く家に戻ったときには、既に東の空が白み始める刻限になっていた。
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