パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第31章 第十二話　【花見月の別れ】　其の弐

　伊勢次が死んだ時、お彩は考えたものだ。
　自分と伊勢次は何のためにめぐり逢ったのだろうか、と。自分という存在は、ただ伊勢次を苦しめ、ついには死地へと追いやるだけの人間だったのかと随分と悩み苦しんだのだ。
　それでも、もし、本当に伊勢次がお彩と出逢ったことを少しでも幸せだと良かったと思ってくれていたのだとしたら、お彩はそのことに、どれだけ慰められるかしれない。
―あの子が惚れに惚れた女と暮らしていた時、どんな風に幸せだったのかを。
　図らずも、今のおきわの台詞は、亡くなる前夜の伊勢次の「幸せだった」という言葉を彷彿とさせるようであった。