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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第33章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の弐
「もう一度だけ訊く、あの子は誰の子なんだ」
 愕然とするお彩の耳を市兵衛の声が打った。
 お彩は唇を噛みしめ、市兵衛を見ないでひと息に言った。
「伊勢次さんの子です」
「私の方を見なさい」
 人に命令することに慣れ切った者だけが持つ声には、独特の響きがあった。耳にする者を従わせずにはいられないような。
 だが、お彩は市兵衛を見ようとはしなかった。
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