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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参 
 この男が本気で怒ったときに見せる瞳だ。
 が、当の市兵衛の表情も声もあまりにも静かなので、河津屋は全く気づいていないようである。
 河津屋仁左衛門は良い気で喋り続けた。
「フン、前の女房だけでなく、今度の女にも愛想を尽かされて逃げられたっていうじゃないか。お前さんほどの良い男が何故、女にそうも次々と逃げられるのかは皆目判らねえが、ちと商いにばかりかまけすぎたか、それとも、男ぶりだけの見かけ倒しで、あっちの方はからきし駄目とか。何しろ、女が好む男ってえのは、男ぶりだけで決まるものじゃねえ。お前のような取り澄ました男より、見かけはてんで駄目でも、夜毎極楽へ送ってくれる男の方が存外もてるものさ」
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