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第36章 第十四話　【雪待ち月の祈り】　其の弐

　それにしても、料理はお彩が担当するとしても、客の注文を取ったり、出来上がったものを運んだりする役目は誰がするのか。客が少なければ良いが、これだけ大勢の客をお彩一人でさばくのは到底無理だ。
　お彩が板場で唇を噛んだ時、ひょいと覗いた顔があった。
「あ―」
　見憶えのある男は、安五郎であった。
「どうかしましたか」
　お彩の切羽詰まった様子に、安五郎が心配げに訊いた。お彩が事情を有り体に話すと、安五郎の精悍な顔が翳った。
「そいつは難儀なことだ。で、喜六郎さんの具合は？」
「判りません。ひとまず二階で寝(やす)んでいなさいますけど」
　お彩は応えながら、ふと閃いた。