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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第36章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の弐
「ええ、大方の経緯(いきさつ)は、先の手代とお彩さんの話だけで察しはついてました。それに、今し方、喜六郎さんからのお話を聞きましたからね。話のおおよそは見えてると思います」
 安五郎は慎重に言葉を一つ一つ吟味しているような喋り方だ。
「私でお役に立てるのなら、歓んでその縁談(はなし)をお受けさせて貰いますよ。あんな美しい女(ひと)なら、こっちも願ってもない話で、それこそ役得っていうもんですから」
 安五郎は満更でもない顔で笑った。
「そう言って貰えると、助かる。恩に着るぜ」
 安五郎が辞退すると考えていただけに、喜六郎はひとまず肩の荷が降りた心地だった。
 市兵衛は全力でお彩を取り戻そうとしている。京屋市兵衛ほどの男が本気になれば、どうなるか―、到底、喜六郎が太刀打ちできるような相手ではない。
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