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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参
喜六郎は半ば自棄で言った。
「京屋の旦那がお前さんとお美杷ちゃんを取り返そうとするのは、お前がまだ旦那の女房ということになってるからだろう。だが、もし、仮にお彩ちゃんが他の男のものになっちまえば、あの旦那も流石に他人の女房にまで手を出そうとはしねえんじゃないかな」
「―」
お彩は息を呑んでいる。喜六郎は続けた。
「つまり、だ。お彩ちゃんが他の男と一緒になっちまえば、旦那もそうそう容易くは動けねえんじゃないだろうかと思ってさ。例えば、これは、あくまでも例えばの話だがな、安っさんなんか、どうだえ。マ、知り合ってわずかだし、お前もあっちもまだお互いに何も知っちゃあいねえが、今はそんな暢気なことを言ってる場合じゃねえ。とりあえず、形ばかりでも祝言を挙げちまって、夫婦(めおと)になっちまったら、どうだい」
「京屋の旦那がお前さんとお美杷ちゃんを取り返そうとするのは、お前がまだ旦那の女房ということになってるからだろう。だが、もし、仮にお彩ちゃんが他の男のものになっちまえば、あの旦那も流石に他人の女房にまで手を出そうとはしねえんじゃないかな」
「―」
お彩は息を呑んでいる。喜六郎は続けた。
「つまり、だ。お彩ちゃんが他の男と一緒になっちまえば、旦那もそうそう容易くは動けねえんじゃないだろうかと思ってさ。例えば、これは、あくまでも例えばの話だがな、安っさんなんか、どうだえ。マ、知り合ってわずかだし、お前もあっちもまだお互いに何も知っちゃあいねえが、今はそんな暢気なことを言ってる場合じゃねえ。とりあえず、形ばかりでも祝言を挙げちまって、夫婦(めおと)になっちまったら、どうだい」