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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参
「全部、喜六郎さんから聞いてますよ。あなたがこれまでさんざん苦労や辛い想いをしたことも聞きました。でも、そんなことは私のあなたに対する気持ちには拘わりありませんよ。そんなことを言うなら、私にだって、お彩さんには今はまだ言えねえ過去がある。誰にでも昔はある。私は過去にこだわるような男じゃありません。昔のことなら気にすることはねえ」
 お彩は安五郎の精悍な顔を見つめた。確か今年、四十になるのだと言っていた。浅黒い顔は整っていて、なかなかの男前だ。その上、腕の良い板前なのだから、女に不自由はしなかっただろう。
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