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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第38章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の四 
 お彩は、お枇杷を布団から抱き上げ、ゆっくりと立ち上がった。そのやわらかな頬に自分の頬を押し当てると、余計に泣けてきた。
―どうか幸せにね。おっかさんを許して。
 お彩は、これから我が手許を離れる愛娘のこれからの幸を祈らずにはいられなかった。
 いつか真実を知った時、この子は母親である自分を憎むだろう。子を捨てた鬼のような母だと恨めしく思うだろう。
 そんなときがくることが判っていたとしても、お彩はこれからこの娘が歩む道に幸多かれと祈らずにはおれない。
 わざとゆっくりと階下に降り、表に出てゆくと、泰助と二十代前半とおぼしき女が人気のない店内に立っていた。その女がお美杷の乳母なのだろう。大人しげな風情で優しげに見えるのが、せめてものお彩の慰めであった。
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