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第39章 第十五話　【静かなる月】　其の壱

　喜六郎にしてみれば、良い加減にあんな女好きの亭主とは別れた方が良いと思ってはいても、肝心の娘がそんなろくでなしの亭主にいまだに惚れているのだから、無理に別れろとも言い出せないでいるのだ。
「す、済まねえ。お彩ちゃんの気持ちも考えねえで―」
　慌てて言うのに、お彩は微笑んで首を振る。
「良いんです。気にしないで下さい。私もいつもふっとあの子のことを考えてしまうんです。旦那さんに色々と教えて頂いてるときでも、気が付いたら、あの子の顔が眼の前に浮かんできて。本当は、そんなんじゃあ、いけないと思うんですけど」