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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐
 昼日中から酒の臭いをプンプンさせている有り様で、よくこんな状態で医者が務まるものだと思うのだが―。
 この竹庵は、伊勢次の母おきわの掛かりつけ医でもあったので、お彩も顔見知りである。昼間は診療所まで通ってこられない患者のために往診に出ていることの多い竹庵であったが、幸いにもこの日は自宅にいた。もちろん、酒盛の真っ最中ではあったが、この際、見ないふりをしておく。
 お彩はトロリとした眼の竹庵の腕を引っ張るようにして、「花がすみ」に連れてきた。一見酩酊状態のように見えるが、いざ患者をを前にすると、別人のようにしゃんとするのが竹庵である。
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