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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐
「私は”花がすみ”に奉公する者ですが、差し支えなければ、主(あるじ)がこちらと交わした証文を見せて頂きたいのです」
 お彩がありったけの勇気をかき集めて言うと、男の態度が豹変した。愛想笑いは消え、代わって、人を見下したような下卑た笑いが浮かぶ。
「ホウ、今度は主の代わりに奉公人が談判に来たか。万策尽きて、次は色仕掛けで、この肥前屋を籠絡しようってえ算段かな?」
 お彩は、男の挑発には全く取り合わず、キッと相手を見つめた。恐らく、この男が肥前屋の主惣右衛門だろう、それならば、なおのこと話が早いというものだ。
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