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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第41章 第十五話 【静かなる月】 其の参
 言いかけて、おしがは肩をすくめた。
「ま、それは夜に床の中で顔を合わせれば判るだろうよ」
 と、どこか陰にこもった笑いを洩らして、去っていった。
 お彩は遣り手部屋から自分の居室に戻っても、おしがのひと言が頭から離れなかった。
 お彩の居間は二階の廊下を真っすぐ進んだ突き当たりにある。二間続きの小座敷は小綺麗に整えられてはいるが、赤を基調とした派手な色めで統一されている内装は、いかにも女郎の部屋といった雰囲気だった。
 通りに面した障子窓はこの陽気にも拘わらず、すべて閉(た)て切っている。茜色の夕陽が障子越しに差し込み、畳に落ちていた。
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