この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第42章 第十五話 【静かなる月】 其の四
その中の一つに、花里が仙吉という見世の若い衆(廓の用心棒や使い走りなどの雑用をこなす、女郎が足抜けをしたときにも活躍し、追っ手となり捕らえて折檻をしたりする)と二人だけでいるところを何度も見かけた。
大抵は、人の眼につかぬ物陰で束の間の逢瀬を持っているようであったが、あの二人が深間になっていることは明らかであった。しかし、廓の掟では、見世の若い衆と売り物である女郎の恋はご法度である。万が一、露見すれば、厳重に罰せられるのが常であった。
仙吉というのは、二十五、六の翳のある、なかなかの男っぷりの良い若い衆だ。無口だけれど、働きぶりはきちんとしている。この稼業に入って、もう十年以上にはなると聞く。「待って下さい」
お彩は自分でも知らぬ中に、声を発していた。何事かと、おしがが振り向く。
大抵は、人の眼につかぬ物陰で束の間の逢瀬を持っているようであったが、あの二人が深間になっていることは明らかであった。しかし、廓の掟では、見世の若い衆と売り物である女郎の恋はご法度である。万が一、露見すれば、厳重に罰せられるのが常であった。
仙吉というのは、二十五、六の翳のある、なかなかの男っぷりの良い若い衆だ。無口だけれど、働きぶりはきちんとしている。この稼業に入って、もう十年以上にはなると聞く。「待って下さい」
お彩は自分でも知らぬ中に、声を発していた。何事かと、おしがが振り向く。