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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第43章 第十六話 【睡蓮】 壱
「―!」
 市兵衛は息を呑んだ。何事にも動じることのない「氷」と異名を取るほどの自分でも、こうして動転することがあるのだと、改めて
他人事(ひとごと)のように思う。
 最後に視界に映ったのは、自分の真上めがけて倒れてくる材木の断片だった。
 刹那、頭部に鈍い痛みを感じたような気がした。
「旦那さまッ」
 泰助の悲鳴にも似た声が聞こえる。
 その声をどこか遠い世界のもののように思いながら、市兵衛の意識は深い深い水底に沈んでゆくように闇に吸い込まれていった。
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