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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第44章 第十六話 【睡蓮】 弐
二年前、江戸でも評判の大店にして老舗の呉服太物問屋京屋のご新造として迎えられたものの、新婚まもなく京屋を出る仕儀とあいなった。
 今の暮らしは確かに大変ではある。店が忙しいときは従来の仲居としての様々な雑用もこなす傍ら、合間の客がいない間は喜六郎から料理について教わらなければならない。実のところ、殆ど休む時間はない。しかし、お彩は今の生活に満足している。
 かつて京屋にいた頃、お彩はお彩なりに新しい環境に慣れようと努めたつもりだ。が、京屋には先代から仕えてきた古い奉公人もいて、お彩を端から成り上がり者としてしか見てはくれなかった。
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