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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第44章 第十六話 【睡蓮】 弐
 以来、市兵衛への想いは少しも変わることはない。が、自分が市兵衛の傍にいても何もできないと知った今、お彩が京屋に戻る理由はない。
 何より、お彩の身勝手さのためにむざと若い生命を散らした伊勢次を思えば、到底男の許に戻れるはずがなかった。たとえ、そのつもりがなかったとはいえ、お彩の行為は伊勢次を利用したとしか言いようがないのだ。何度も求婚を断っておきながら、京屋を出たその脚で伊勢次の長屋に行き、助けを求めたのだから。
 もし、あの折、お彩が伊勢次を頼ることがなければ、伊勢次は死ぬこともなかったはずだ。
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