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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第44章 第十六話 【睡蓮】 弐
 かつては吉原一の花魁と謳われた若菜太夫とも浮名を流した色男なら色恋沙汰で恨みを買っていたとことも考えられるし、また、商売絡みの怨恨もあり得るとして、その後に、氷の京屋と云われただけあり、商いにかけては血も涙もない冷酷な面があったと辛辣に書いていた。
 が、お彩が気になったのは、そんな心ない誹謗中傷めいた記事ではなく、中ほどに書いてあったことだった。瓦版というのは、あることないことを取り混ぜて面白おかしく書き立てるのが常道だ。読む側に興味を持って読ませるという書き手の意思が常に存在するから、こういった書き方は別段珍しくはない。 市兵衛が事故に遭った夜、付き従っていた手代頭の泰助が事件直後に走り去る不審な人影を目撃しているというのだ。
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