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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第45章 第十六話 【睡蓮】 参
その上で、今更のこのこと京屋に顔を出せば、一体何のつもりだと勘ぐられても致し方のないことではあった。殊に主の市兵衛が明日をも知れぬという状態のこの時、ひょっこりと戻ってくれば、もしや京屋の身代が目当てで帰ってきたと誤解されることは明白だ。
「申し訳ございません。私がこちら様に対して致しましたことには今更、弁解の申し上げようもございません。ただ、私が本日こちら様にお伺い致しましたのは、お願いがあるからでございます」
お彩が消え入るような声で言うと、お知歩が口の端を上げた。
「ホウ、お願いとなあ。その願いとは、一体何なのですか」
金でも強請りにきたのかと言わんばかりの詰問口調だ。
「申し訳ございません。私がこちら様に対して致しましたことには今更、弁解の申し上げようもございません。ただ、私が本日こちら様にお伺い致しましたのは、お願いがあるからでございます」
お彩が消え入るような声で言うと、お知歩が口の端を上げた。
「ホウ、お願いとなあ。その願いとは、一体何なのですか」
金でも強請りにきたのかと言わんばかりの詰問口調だ。