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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第6章 其の参
「私、これからも〝花がすみ〟の仕事を続けます」
 勢いよく言ったお彩を男が優しいまなざしで見つめて頷いた。
「それじゃあ、私はそろそろ帰るとしよう。夜道は危ないから、用心してお帰り」
 あっさりと背中を向けた男に、お彩は叫んだ。今、言わなければ、きっと一生後悔する。
「また、逢えますか?」
 立ち止まった男の背中に一瞬緊張が漲った。男が振り向く。
「先ほども言っただろう? 私はいつもお前さんの近くにいる。もし、お前さんが心から望めば、いつかまた、必ず逢えるはずだ」
 振り向いた男の端整な貌には謎めいた微笑みが刻まれていた。その整った顔に浮かんでいた感情は果たして何だったのだろう。運命(さだめ)に導かれてめぐり逢い、惹かれ合うお彩と男の未来への哀しい予感? それとも、これから始まろうとしている新しい恋への明るい希望?
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