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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第45章 第十六話 【睡蓮】 参
 それから更に数日を経た。
 京屋での女中としての暮らしにも少しは慣れた。おみよは何かと気を遣ってくれ、お彩を庇ってくれたけれど、お知歩の風当たりは強く、顔を見ると、嫌みや愚痴は毎度のことであった。それでも、大番頭佐平や手代頭の泰助、更には他の大勢の奉公人たちがお彩に向ける眼は以前とは随分違っていた。何も言わないけれど、敵意と侮蔑のこもっていた昔と異なり、今は同情と共感のようなものがこもっている―少なくとも、少しは好意的なものに変わっていた。
 態度にもそれは表れて、お彩が市兵衛の身体を拭くために盥を運んでいると、さりげなく別の女中が手を貸してくれたりするのだった。この反応は、お彩には意外であった。
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