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第45章 第十六話　【睡蓮】　参

「許してやって下さい。磯五郎は、母がうっかりと洩らしてしまった言葉にそそのかされたのです。けして心から京屋の旦那さまを殺めようと企んでいたわけではないと思います」
　事件当夜、磯五郎は“大変なことをしでかしてしまった”と、まるでうわごとのように何度も呟きながら泣いていたそうだ。
「私には弥助さんという心に決めた男(ひと)がいますが、磯五郎は幼いときから一緒に育った兄妹(きようだい)のようなもので、私にとっては兄も同然の大切な人なのです」
　お佐歩は言った。磯五郎は兄のようなもので、異性としては見られないが、自分にとっては大切な存在なのだと。その言葉は、お彩に伊勢次のことを思い出させた。