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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐 
それで、親父にこっそりと問い質したんだ。初めは適当にはぐらかすつもりだったようだけど、結局、親父は真相を話してくれたんだ。俺を生んだお袋は元々身体が弱くて、俺を生んで三カ月ほどで亡くなっちまった。親父は乳飲み子を抱えてどうしたら良いかと困り切っていた。そんなところに知り合いの紹介で今のお袋との縁談を持ってきたらしい」
 その紹介された女―伊勢次の今の母親もやはり当時、当歳の我が子を亡くしたばかりであった。子はおらずとも乳だけは豊かに湧き出るのが切なく涙に明け暮れている日々であったという。そんな時、伊勢次の父親の後妻にという話を勧められ、その気になったのである。
 お彩は伊勢次の話にいつしか聞き入っていた。
「一つだけ訊いても良い?」
 お彩が問うと、伊勢次は頷いた。
「ああ、構わねえよ」
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