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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐 
 が、今夜、伊勢次から想いを打ち明けられるとは、しかも結婚まで求められるとは想像もしていなかっただけに、お彩の衝撃は大きかった。そのことは、伊勢次への気持ちとはまた別次元の話だ。
 伊勢次には申し訳ないけれど、お彩は伊勢次を一人の男として見たことはない。お彩にとって、伊勢次はあくまでも「花がすみ」の馴染み客であり、ましてや将来の伴侶だなぞとは片々たりとも考えたことがないというのが実状であった。どうして伊勢次がこれまでにもお彩に数々の気遣いを見せた―住まいまで様子を見にきたりしたのかという疑問には漸く合点がいった。
 お彩は一体、何と言えば良いものか皆目見当もつかなかった。あまりの意外な成り行きに、ただただ茫然とするのみである。
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