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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第11章 第三 【ほたる草】 其の参
「お前が泣いたのを俺ァ、初めて見たぜ」
 偉兵衛が小巻を抱きしめて呟いた。
 小巻は小巻なりに一生懸命に己れの花を咲かせようとしているのだ。お彩もいつしかじんわりと熱いものが込み上げてくる。
 お彩の眼に、足下に咲く小さな藍色の花が滲んで見えた。
 その日の夕刻、小巻は良人の偉兵衛と共に倅の敬次郎を連れて大和屋に帰った―。
 今回の一件は流石にこたえたのか、偉兵衛の女遊びもそれからしばらくは、鳴りをひそめているようだ。
 と、これは後日、日本橋の大和屋に孫の顔を見にいった喜六郎から聞かされた話である。
                
       (第三話 ほたる草 了)

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