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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】  其の壱
今度はいつ逢えるのだろうかと、そんな埒もない考えばかりが頭をよぎり、知らず溜め息が零れる。それでも、お彩は自分自身の陽他を好きだという気持ちを信じて、募る恋慕の想いに懸命に耐えていた。心から信じ願っていれば、陽太と自分の縁の糸もいつか必ずまたどこかで繋がるはずだと信じていた。
 この時刻、「花がすみ」は閑散としていた。店内は小机が幾つかと腰掛け代わりの空樽だけで一杯になるほどの狭さであった。今、店内には客の姿はなく、昼下がりのいちばん暇な時間である。つい半刻ほど前までは職人や人足といった男たちが飯をかき込む姿があちこちで見られ、狭い店は客ですし詰め状態であった。
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