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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】  其の壱
 本当の親子ではないと判って以来、お彩の父に対する想いはかえって深まった。
 実の子ではないと知りながらも慈愛をもってお彩を育て上げてくれた父。かつては、その父に惚れていなぞとは馬鹿なことを考え、その引け目から父に辛く辺り、さんざん哀しい想いをさせてしまった。母お絹は三十過ぎの若さで流行病で亡くなってしまったけれど、その分、伊八にはできるだけのことを娘としてしたいと思っている。
 たとえ血が繋がらずとも、それを乗り越えるだけの確かな絆ものある。ましてや、真の親子であれば、共に暮らすことは当然のことのように思える。承平が喜六郎の息子だというのならば、何とかして万事がうまくゆくようにできないものか―、と、お彩は真剣に考えるのだった。
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