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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】  其の弐
 子どもの頃に返った気分で、小石を勢いつけて水面に向かって投げてみる。生まれ育った甚平店でも自分より年上の男の子を泣かせるほどのお彩だった。
 放り上げられた石はゆっくりと大きな孤を描いて、水面に落ちてゆく。その光景をぼんやりと眺めながら、お彩が小さな吐息を零したときのことだった。
「なかなかやるじゃねえか」
 ふいに頭上から声が降ってきて、お彩はハッと現実に引き戻された。
―もしかして、これは夢なの?
 お彩はそっと窺うように声のした方を見上げた。
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