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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第2章 第一話-其の弐-
「もう四カ月に入っていて、悪阻も烈しいらしいから、何か精のつくものを食べさせてやらないといけないねえ」
 喜六郎は一人で喋り続けている。
 伊勢次は小さく肩をすくめた。
 お彩も仕方ないわねというように微笑んで見せる。そっと表の戸を開けて覗いてみれば、雨はいつしか止んでいた。
 空の向こうが明るくなり始めている。どこかで雀の囀りがかしましく聞こえていた。
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