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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第17章 第七話 【雪花】 其の弐
 伊勢次がお彩を避けているのは、何もお彩が求婚を断ったからではなく、選んだのが陽太だからだろう。お彩は伊勢次から求婚されていたのに、一年間返事をしなかった。その挙げ句に、伊勢次に断り陽太を選んだのだ。流石に人の好い伊勢次も愛想を尽かしたに相違ない。
 それに、お彩自身、今更陽太との恋に望みがなくなったからといって、伊勢次に縋ろうとは思わなかった。何も意地を張ったりしているわけではなく、陽太にふられたからといって伊勢次に乗り換えるというのでは、あまりに身勝手であり虫が良すぎるからだ。
 伊勢次に求婚を辞退するまで、お彩はひそかに怖れていた。これまで兄や友達のように気の置けない間柄であった伊勢次との関係が壊れてしまうのではないかと考えていたのだ。そして、その理由は違っていたとしても、結果は同じになってしまった。
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