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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第19章 第八話  【椿の宿】
 我ながら、何とも真っ赤な嘘がつらつらと出てくるものだと呆れた。自分はこんなに嘘をつくのが上手くはなかったはずだ―と、お彩は哀しくなった。甚平店中、探したって、おともという娘などいるはずがない。
 父の伊八は何より嘘をつくのを嫌う人間だ。そんな父に愛情込めて育てられたお彩もまた、二親譲りの人の好さを受け継いでいる。もし父が今の自分を見たら、どう思うかと想像しただけで、お彩はやり切れない気持ちになった。
 一方、喜六郎は、わざと明るさを装おうとするお彩の空元気を痛ましく見ていた。お彩は生来、真面目な性分だ。ゆえに、「花がすみ」に勤め始めて四年になる今も、よほどのことがない限り滅多と休みを取ったことなぞない。
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