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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】  其の壱 
【其の弐】

 その翌日は雨になった。
 伊八の棺は故人にとっては馴染み深い甚平店の男たちによって担がれ、ひっそりと随明寺へと向かった。寡黙ではあったけれど、律儀で人の好かった伊八を偲んで、長屋中の住人が葬列に参加した。
 小雨とはいえ、秋の雨は冷たい。墓地に埋葬し終えて甚平店に戻ったお彩は身体の芯まで冷え切っていた。帰ってきたときには集まっていた者たちも既にそれぞれの家に引っ込んでいた。伊勢次はその日もずっと一緒だったのだが、けして出しゃばったりはせず、常に遠くから見ていてくれたのがありがたかった。流石に一人きりになったお彩と共に甚平店に戻ることは遠慮し、葬儀が済むと目立たぬように先に帰っていったのだ。
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