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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】  其の壱 
 伊勢次はそれもまた戯れ言めいた口調で言い、屈託なく笑った。
「本当に本当に怒ったりしてません?」
 お彩が窺うような眼で見ると、伊勢次は大きく頷いた。
「ま、本音を言えば、顔で笑って心で泣いてっていうやつかな。でも、良いよ。今回も駄目で元々だと思ってたからね。俺たちはこれまでもこれからもずっと友達。だから、友情は変わらねえってことで、良いんじゃねえのかい」
 伊勢次の言葉がお彩の心に温かく滲みた。
 お彩は、ただ黙って軽く頭を下げた。
―おとっつぁん、これで良いのよね?
 心の中で父に呼びかけた。
父の笑顔が一瞬、お彩の瞼に浮かんで消えた。
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