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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】  其の壱 
 市兵衛が振り向く。
 お彩は恋しい男を見つめた。
 男もまたお彩を見つめる。
 果てしがないと思えるほどの長い間、二人は物も言わずに視線を絡ませ合っていた。
「親父さんのこと、聞いたよ。葬式にも顔を出せねえで、済まない」
 市兵衛が静かな声音で言った。
 お彩は、ゆるりと首を振った。今の市兵衛の立場では、それは致し方のないことだと判っている。京屋ほどの大店の主が突然、甚平店でしめやかに行われている父の葬儀に現れたとしたら、誰もが仰天するだろう。裏店と京屋の主人は、あまりにも不自然な取り合わせであった。
「相良屋のところの倅を助けて貰ったそうで、そのことも併せて謝らなければならねえと思ってる」
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